ペレーヴィン『宇宙飛行士オモン・ラー』
宇宙飛行士オモン・ラー (群像社ライブラリー)
posted with amazlet at 10.07.21
少年オモンは、宇宙飛行士に憧れて、飛行機乗りを志す。
ところが彼はなんと希望通り宇宙飛行士になるように命ぜられるのであった。
ただし、秘密裏に。彼が成功したとしても、その勇姿は新聞を飾ることはない。
秘密任務は、月面「無人」探査機の操縦。
ソビエトの「無人」探査機は、実は人が操縦していたのだ!
月の(アメリカが探査していない)裏側で「無人」探査機のエンジンとして取り残されたオモンは、ひたすら自転車を漕ぎ続ける……。
ソビエトの宇宙開発には、多くの犠牲が払われた。しかし、あってはならない事故は、死亡した宇宙飛行士の存在全てと共に闇に葬られた。今、隠された真実が明らかに……!!
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J.フォンンクベルタ(監督・主演)の偽フォト・ジャーナリズム残念・・・・
わかりにくすぎるフィクション?
「超ノンフィクション」の真意は・・?
割と軽くさらさらと読めてしまった。とてつもなくとっぴでむちゃくちゃな、もう笑うしかない、けれども「ソビエトならありそう!」という展開が続くのだが、……それを息がかかるほどの目の前で真顔で朗読されるような、笑ってはいけないような、鬼気迫る重さがある。
感触としては、北野勇作の『クラゲの海に浮かぶ舟』とか、『昔、火星のあった場所』にものすごく良く似ている。針が飛んじゃうぐらい擦り切れたアナログ板のレコードのように、現在と未来と過去がないまぜになり、同じようなモチーフが繰り返される。
でも、少なくとも『クラゲ』のような明確な「筋」や、パズル的な仕掛けはない気がする。
クラゲの海に浮かぶ舟 (徳間デュアル文庫)
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おすすめ度の平均:
ふわふわ…?実際に、それがソビエトという国と、そこに暮らす人々の閉塞感の直喩としか読めないのでした。原書は1992年、ソビエトの崩壊は1991年12月25日なんだから、距離感などあろうはずもない。このタイミングでこの内容。ソビエト華やかりし頃のソルジェニーツィン『収容所群島』の方がまだ距離感があるように感じるぐらい。
収容所群島(1) 1918-1956 文学的考察
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パワーが必要歴史は巡る
長い小説ですがのめりこめます。
精霊たちの家 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-7)
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上が黒と言えば白も黒になり、隠された真実に嘘が取って代わり、人の命がなかったものとして扱われ、死んだとされる人すら帰ってきてしまう社会のリアルが、マジックリアリズムであって、ノンフィクションの一種だと私は思っていて、これも多分そう。
生傷を見せ付けられるようなひりひりした感触も込みで、面白かった(興味深かった)。
3段のロケットが切り離される仕組みと、その成り行きがツボでした。酷すぎる。あと、犬。
自転車SFと呼べる程度には自転車SFだと思うし!! どっちかというと、鳥人間の方が近いかも。