映画『ふがいない僕は空を見た』

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※予告の出来が大変残念なので、興味のある方は、予告を見ずにどうぞ。

ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)
窪 美澄
新潮社 (2012-09-28)
売り上げランキング: 1847

コスプレ主婦とセックスしまくる高校生、というぐらいの予備知識しかなく、てっきりWeb漫画『いわせてみてえもんだ』(大傑作。健全です)みたいな映画だと思っていて、

スルーしようかなあ、でも評判いいんだよねえ。と、予告すら見ずに行ってきた。
本当に素晴らしい映画でした。
サブカルっぽいのを想像してたら、とんでもない!久々にすさまじくいい「ザ・邦画」!見ている間中、今この瞬間、私はすごくいい映画を見てる!っていう圧力に全身ぞくぞくしっぱなし。これ、絶対に高校とかで上映するべき!と思ったら18禁というこの矛盾。とても残念。確かに生々しいというか、リアルというか、ぬるぬるしてずぶずぶとどこまでもはまっていく温くて気持ちのいい底なし沼みたいなあの描写は素晴らしくて、絶対に必要なので、仕方がない……かもしれないけれども(彼の境遇でなぜゴムを付けないのか(たとえ彼女に請われたとしても)というのは、この映画中、多分ほぼ唯一の納得できない点だが)、是非高校生にこそ見てもらいたい映画だった。
原作(未読)は連作短編の形をとっているそうで、通して見ると、決してバランスのいい構成とは言いがたい。なるほど前半の斎藤君パート以降はずっと福田君のターン!!になってしまうぐらい、福田君マジ主役。彼(ともう一人)のあの行為に明確な理由は描かれておらず、でも、そこにある種の「共感」が持てるかどうかで、この映画の好き嫌いが決まるのかもしれないなあと思った。あの最後の登校場面……。
(この部分、いわゆる「いじめ」とは何なのかについて、言葉よりも如実に、ダイレクトに、映像と演技が見せているので、本当に「学校」で見て欲しい映画なのですよ。18禁だけどさorz)
そして、助産婦の母、という立場が、なまじっかなことでは軽く、ご都合主義に聞こえてしまう台詞も、重みと実感を持って響いてくるのが、ズルいなー!と感心した。本当に。
青春と、恋愛だけで人生は終わらない。その先にある結婚、子作り、出産、子育て、子が親になり、親が子を産む循環。性に振り回される生。ああ、人生って面倒くさいけど、生まれてしまったら、死なないかぎり、生きていかざるを得ないんだよなあーという映画。
閉鎖空間での青春群像を描いた『桐島、部活やめるってよ』もミニマムでいい映画だったが、親子関係、社会、外部、ネット、お金でがんじがらめになってもがき続ける生を描ききった『ふがいない僕は空を見た』の方が、私的には圧勝でした。
本当にいい映画だった。もう一度見に行きたいな。