『ゼーガペイン』改めて。ネタばれなしに凄さを説明する方法を模索してみる。

何度でもしつこく言うけど、不世出の大傑作超本格SFジュブナイル! 見返せば見返すほどすごい。
ネタばれなしに凄さを伝えるためにはどうすればいいんだろう?
ベタな設定にベタを重ねつつ、必ず視聴者の予想の右斜め上を走る展開。「似た」SFは五万とあれど、物語としての完成度、丁寧さでは類を見ないと思う。
今日も飽きずに3本ローラーのおかずは『ゼーガペイン』23-26話。最終回まで見て時間が余ったので適当に6話。
冒頭の1-8話も見返したけど、全部わかってから見ると、すさまじく痛い。そこでは、何も知らずに戦うキョウが、知らないがゆえに致命的なミスをおかし続けていた。何も知らないのは、初見の視聴者も同様だった……。ありきたりな、退屈なと評される前半数話に、実は恐ろしく重要で膨大な情報と、あまりにも悲痛な物語が詰め込まれているという事実。よく6話まで我慢して見ろと言われるが、5話まで来ればそろそろ物語の衝撃的な秘密がほんの少し垣間見えるはず。ただし、それすら序の口にすぎないのだが。
ストーリーは徹底的にキョウ視点の世界観で完璧に表現されている。大局的な視点をばっさりと切り捨てているところも含めて、バランス感覚が極上。キョウの見る世界、キョウの感じる痛みを視聴者に重ねることによって、世界の秘密の開示とキョウの葛藤を完全にリンクさせ、視聴者にキョウの感情ごと飲み込ませつつ、物語を自然に説明していけるのだから。
キョウは頭では恐ろしいほどに鋭く現実を理解できているのに(外から見ている視聴者と同程度に!)、それを容易には受け入れない。感情がそれを許さないから。「ありえねぇ」という口癖は、見ている視聴者の感想とも同期している。
そんな状況でも、流されるでもなく、諦めるでもなく、自棄になるでもなく、裸で現実と向き合い、己の感情の奥底の声を聞き、葛藤を重ね、挫け、えげつなくこっぴどい方法で叩き潰されても、自力で立ち上がる。どんな残酷な現実を突きつけられても、何度でも。底なしの絶望しかない世界を受け入れ、それでも生き抜くために。
……と書くと、ひたすら暗い話のようだが、キョウの若さと、前を向こうとする気力と、熱血馬鹿っぷり(しかも頭がいい)、そして周りの人々との関わり合いもあって、決して明るさを失うことはない。青春アニメとしても素晴らしい出来。
このキャラクターを作り上げられたからこそ、史上類を見ない完全敗北設定で始まる物語の、到底実現不可能な(まさに「ありえねぇ」)勝利条件を、どうやって(How)?ではなく、どちらを選ぶか(Which)?にすり替えて、一人の少年に委ねさせることができた。絹の糸一本の綱渡りを、見事に成し遂げてみせた。
構成と脚本が絶妙すぎる。凄まじい完成度と、文句のつけようのないバランス感覚。
素晴らしきかな、上腕二頭筋

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