映画『電信柱エレミの恋』

本当にいい映画だった。
http://www.elemi.info/

電信柱エレミの恋 [DVD]
ポニーキャニオン (2010-10-20)
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とりあえず京都では、明日12日のイベントと、9月末から10月頭にかけて京都シネマで見られるようなので、是非是非。今、スイスの映画祭で上映されていて、チケット完売満員御礼らしいが、さもありなん。
人間に恋をしてしまった電信柱のおはなしを描いたストップモーションアニメーション(コマ撮りアニメ)。製作8年。上映45分。
金曜日に十三の第七藝術劇場で、最終日の最終回(ってもレイト1日1回だけど)を見てきた。8割の入り。パンフレットと原作(改訂版)本、ピンバッチまで買ってしまった。よかった。
まずは「電信柱」という素材の勝利。超俯瞰、超ローアングルを使いまくることで、ミニチュア名セットがより立体感を持って描かれていて……というか、そういうアングルに堪えるだけの作りこみがなされていて、隙がないってことだねえ。
映像の作り込みはすごかった。単に細かいだけじゃなくて、小道具一つ一つにこめられた情感が素晴らしい。特にタカハシさんの部屋が……。一人暮らし経験者にはきゅんと来るわあ。
時折ぐさりと来るほどリアルに描かれていながら、やさしくデフォルメされた世界は、ファンタスティックでシュールだけれども、リアリティを決して損なうことのない、ゆるがない視点に支えられているのだと思った。
だからこそ実現できたあのラストシーン。
物語中の奇跡が本当に貴重な奇跡として存在するためには、物語世界がリアルでないとならないから。何でもありなファンタスティックな世界で、どんなにファンタスティックなことがおきても、それは「奇跡」としては感じられない。感動は起こりえない。
「切ない」とか、そんな一言では言い表せない、あの1カットに込められた登場人物たちの万感の思いと、そのシーンを手がけた人々の優しさ。それを感じるためだけでも見る価値があると思う。
いい映画でした。