『太陽の牙 ダグラム』全75話+MOVIE on 3本ローラー

見始めたのは、3/5。id:shanimu:20100305。1巻5話収録なので、120分ずつ、15回で4/2に最終回。id:shanimu:20100402。
どんな話かと聞かれたら、「山崎豊子の小説を、何かの間違いでロボットアニメにしちゃった」ような話だと答える。骨太の政治戦争群像劇でした。
これから見ようと思う人には、40話まで我慢して見ろと言いたいのだけど、……40話……('ω')。でも、それだけの時間と物語を丁寧に積み上げなければたどり着けなかった感動があるのよ。見てよかった……ときっと思えるはず。

デロイア星では地球に対する不満が高まり、独立運動が勢いを増していた。ある日、デロイア星の首都、カーディナル市で、地球連邦評議会議長のドナン・カシムら評議会の議員たちを、地球連邦軍第8軍大佐、フォン・シュタイン率いる部隊が監禁し、デロイアの独立を宣言するという事件が起こる。事件の報道を聞いたドナンの息子・クリン・カシムは地球連邦軍の救出部隊に志願し、人質の解放に尽力した。
しかし救出されたドナンは、フォン・シュタインを免罪し、デロイアを地球連邦の8番目の自治州に昇格させ、フォン・シュタインをその代表に任命した。一方、ドナンは事件の首謀者として、デロイア独立を支持した代議員を投獄し、フォン・シュタインに呼応して立ち上がった独立運動家たちを徹底的に弾圧する。すべては地球百億の民のためにあえてデロイアの民を泣かせる覚悟を決めたドナンが、デロイア独立運動の「ガス抜き」のため、フォン・シュタインと共に仕組んだ狂言に過ぎなかった。
事件の真相をジャーナリストのディック・ラルターフから聞かされたクリンは苦悩するが、ひょんなことからデロイアの完全独立を求める指導者デビッド・サマリン博士と出会う。サマリンはクリンをドナンの息子と知りながらあたたかく迎え、独立派が開発した最新鋭コンバット・アーマーダグラムパイロットとして仲間に紹介する。だがクリンがサマリンと出会ったことで、サマリンの居場所が地球連邦軍に割れてしまい、サマリンとダグラム地球連邦軍に奪われてしまう。
責任を感じたクリンは単身、地球連邦軍の基地に乗り込みダグラムを奪回、デロイア独立運動に身を投じることを決意する。地球時代の友人、ロッキー・アンドルらのグループ(後の太陽の牙)に合流したクリンは、ダグラムによって次々と地球連邦軍を蹴散らしていく。サマリンも独立派ゲリラの尽力によって救出され、デロイア独立の気運は、ドナンの思惑とは裏腹にますます高まっていく。
そのころ、野心はあれども理想はないドナンの補佐官、ヘルムート・J・ラコックは、ドナンを排し、自らがデロイアの支配者となるための私欲にまみれた策謀を密かに進めていた。
(wikipediaより)

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『ドキュメント 太陽の牙 ダグラム』を見た。テレビ版全75話を80分にまとめた総集編の映画版。一部白黒の荒い映像を使ったりして、報道映像風に作りこんである。ストーリーのメインは地球連邦とデロイア解放軍内のトップ同士の政治的駆け引きや相次いだクーデターの流れで構成されていて、ほとんど太陽の牙の面々やダグラム……実戦部隊は登場しない。
ダグラム』の75話はとても長くて複雑で、このドキュメント版を見て初めてどういうストーリーだったのかが把握できたという人が多いらしい。確かに。政治家やゲリラのトップのおじさんたちが、背信、クーデター、内通、転向、陰謀等、ありとあらゆる手練手管で戦争を動かしているのであって、主人公ら実戦部隊は所詮末端分子にすぎないから。
でも、この75話という長さにこそ意味があると思う。多すぎる登場人物の一人一人に十分な書き込みがあり、それぞれの物語がそれぞれで成り立っている。大人がみんなちゃんと仕事をして動いている社会が描かれているのは、やっぱり凄いことだと思う。最強兵器を持ったおこちゃまが変えられる安易な世界ではなく。
「誰もがデロイアのためを思っているのに、貴様というヤツは!」というせりふが終盤にある。どの大人たちも彼らなりの正義と仕事をしている。その描写がきちんとしているからこそ、純粋に理想と真実を求め、感情のまま行動する若者たちの挫折が、こんなにも悲しくて、すがすがしいのだ。
19世紀末のブラジルの内戦を題材にした『世界終末戦争』という大著がある。ハードカバーで700ページ超、細かい文字で2段組で、これもすごいボリューム(だが、非常に読みやすくて面白い!)。
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↑の書評が本当にすばらしいのだけど、宗教指導者に従い安住の地を求めた人々は、さまざまな勢力の頓珍漢な思惑により攻撃され、最後にはブラジル正規軍に大虐殺される。
ダグラム』は、講和と、若者たちが生き伸び、未来を作ることを選んだ。戦闘で決着をつけるラストは、アニメ的にはわかりやすいけど、政治的な戦争の終結はとてもわかりにくい。これだけ説得力をもたせるために、75話というボリュームが必要だった。この長さのせいで、手軽に見られるものではなく、埋もれた名作になってしまっているのが勿体無いけど(それは『世界終末戦争』も同じく)。
ああしかし、最後の10話のカルメルさんは本当にいいなあ。そして、アレが大義のためでなく、単なる狂気によって引き起こされたというのも、ものすごいバランス感覚だと思った(アレは大義によってなされてはいかんと思う)。
文句なしの名作でした。
チョロQダグラム』も面白かった。
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3 高橋監督の歴史観
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