伊藤計劃『虐殺器官』
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
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虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
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これまで、年刊SFアンソロジーに収録されているものは読んでいる。
年始に読み始めたこの本を、先週やっと読み終えた。読書の習慣がなくなってしまって、遅読にもほどがあるわ。その間に文庫本が発行され、2ヶ月足らずの間に6刷を記録しているという。
薬物や医学でコントロールされた暗殺部隊の兵士が見る戦争は、リアルな離人感のフィルターを通しているよう。全体的に漂う虚無感がいい。読むのに時間をかけておいて言うのも説得力がないけれども、ぐいぐい読ませる力はあるし、とても面白かった。SFガジェットへのこだわりや、書き下し方も、堂に入っている。
ただ、登場人物が、自分の夢の中の人々のように、みんな同じ言葉で語っていて、みんな同じヒトのような雰囲気があるのが気になった。いくらインテリ同士の会話でも文化的背景、個人個人の考え方に差が見えず、コミュニケーションによどみがなさすぎる。 登場人物の思考の飛躍の仕方がそろいすぎている。その内容自体は面白いのだが、「キャラクター同士が会話している」シチュエーションを頭に浮かべようとすると、それが成立しない。一人が問答しているようだ。先の離人感も含めて、登場人物同士がみな同じような(悪)夢を見ているようなのも、伏線と言われればそうかもしれないが、世界の厚み、スケール感を損なっているように思える。
そもそも、これは「一人」の話なんじゃないかと。そう思えば、その「一人」の深淵の書き込みっぷりには、引きずられるような凄みと迫力があるのだ。でも、私はもっと他のヒトどうしが織り成す厚い物語も読みたかったなあ。
残り未読の長編は2本。
ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
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メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット (角川文庫)
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おすすめ度の平均:
終焉と遺作。