2008-03-02から1日間の記事一覧

残雪『黄泥街』

その夜は月もなく星もなかった。斉婆はごみの山のなかに立って、事務所の窓のカーテンが風をはらむのを見た。なんだか黒い怪しい鳥が舞い上がり舞い下りしているようだ。市内の大時計が二時を打ち、ごみの山のなかでだれかがうなり声をあげた。斉婆は音のし…