映画『汚れなき祈り』

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2005年ルーマニアの修道女が悪魔払いの末に死亡した実話を元にした映画というキャプションから受ける印象と全く違う映画。修道院側もあれは偉いわ!と思わせる演技、演出がすごい。彼女が出す問題に対する修道院側の回答がことごとく頓珍漢で、そこが徹底的で圧倒されるという。
かつてチャウシェスクが支配したこの国で、逃れられない貧困と寒さからの最後のセーフティネットとしての修道院の覚悟。普通あんな女、追い出すって!ということをされても、全力で悪魔払い、善をなそうとする。精神科で治療すれば良かった物を、斜め上のことをされて死んじゃうけど、とにかくもう全身全霊全力で本気で「救おう」としているのが凄い。修道院も出て行ってもらいたいから受け皿を探すけれども、それがない以上、「見捨てる」という選択肢はないらしい。
女性の行動も修道院側の対応も、両方共筋道が追えなくて、理解どころか、突っ込むことさえできず、「なんで?なんで?」と頓珍漢ぶりに振り回されるうちに、白と黒の世界観に飲み込まれてしまうところからのラストが、本当にかっこよかった。
ちょっとネタバレ。修道院では鉄の意志で悪魔祓いをしようと、彼女を救おうとしていた修道女が、病院では消え入るような声で、自信なさげに言い訳を呟くところが、とても印象的だった。
とにかくひたすら丁寧な映画でした。