『電信柱エレミの恋』


電信柱エレミの恋 [DVD]
ポニーキャニオン (2010-10-20)
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2010年9月10日に十三第七藝術劇場で見て、今回は神戸アートビレッジセンターで監督のトークがあるとのことで見てきた。
監督のトークでは、8年間の制作期間をどうやってぶれずに作ってきたのか、その共同作業のカタチも垣間見れて、よかった。持ち出しの自主制作なのだけど、作る姿勢は明らかに「プロ」の「芸術家」そのもの。そりゃそうなんだけど、作品と、それに関わる人たちに対する真摯な姿勢と、「完成品」を目指すぶれない思いがとても熱く伝わってきて……。本当に空席が目立っていたのがもったいなさ過ぎた!
監督の話で一番印象的だったのは「電信柱が人間に恋なんてするわけがない。自分はそう思う。という点をフラッグ(遥か先に見る目標)として、それはぶれないようにした」ファンタジーへの視座。だからこそあの「存在感」があった。
前述の自分の日記からの引用。

時折ぐさりと来るほどリアルに描かれていながら、やさしくデフォルメされた世界は、ファンタスティックでシュールだけれども、リアリティを決して損なうことのない、ゆるがない視点に支えられているのだと思った。
だからこそ実現できたあのラストシーン。
物語中の奇跡が本当に貴重な奇跡として存在するためには、物語世界がリアルでないとならないから。何でもありなファンタスティックな世界で、どんなにファンタスティックなことがおきても、それは「奇跡」としては感じられない。感動は起こりえない。
「切ない」とか、そんな一言では言い表せない、あの1カットに込められた登場人物たちの万感の思いと、そのシーンを手がけた人々の優しさ。それを感じるためだけでも見る価値があると思う。

彼は最後のあの奇跡のシーンで、本当に電信柱エレミの存在、その正体を信じて、納得したのか。単純に「納得している」と言い切れるようなロマンティックさはなく、「そんな風に考えたらロマンティックだよね……」というぐらいの見事な美しい距離感があると思える。逆に(意地悪に)解釈すると、すべてはエレミの告白から彼が空想した御伽噺だったんじゃなかろうか。そう思える、「リアル」があのラストシーンにはあるように思えるのだ。「お話の世界」と「現実の世界」の超えられない境界線が、「見える」形で提供されているからこそ、「お話」が美しく見える、ような感じ。上手く言えないけど。
お話のてんぽとか全体の展開は「落語」の影響が大きいと言うのはとても納得した。画面に映らないバイクキャラの顔が鶴瓶なことに、会場は爆笑。
声録りは制作初期に行っていたので、8年目に完成時には主演の女優さんは結婚して苗字も住所も変わり、音信不通に。最初の試写のために必死で探したら、ある日、「あの声」で、監督の携帯に「もしもし……」と!エレミから電話がという感動のエピソードも披露。それは萌える。
神戸は明日まで。来月は尼崎で上映予定。
http://park11.wakwak.com/~sovat/e_j_common/roadshow/elemischedule.html
参照!本当に見て損がない作品です。ぜひに!