マリオ・バルガス=リョサ、ノーベル文学賞受賞!!

2時間のローラーの後、受賞を知る。やったーッ!!

世界終末戦争 (新潮・現代世界の文学)
マリオ バルガス・リョサ 旦 敬介
新潮社
売り上げランキング: 515090
おすすめ度の平均: 5.0
5 語りの戦争
画像は私が持っている『世界終末戦争』ですが、ギャー!! 猫の爪痕が……ッ!! って、まあ、私はあんまり気にしないヒトなので別にいいけど。この機会に、『世界終末戦争』は是非文庫か何かで復刊して欲しい(つ_T)。2段組で700ページ超の大著ですが(隣にあるのは文庫本)、脅威のリーダビリティの高さで読ませます!!
レビューは、http://blog.goo.ne.jp/ntmym/e/f8c52ba6abc806a4f9194c75e60f5a69 こちらが素晴らしい。

「何十人も何百人もが死んでいっている」。クンベの司祭は通りの方をさし示しながら言った。「どうしてなんだ? ただ神を信じたがゆえにだ。ただ、神の法にしたがって生きようとしたがゆえにだ。またもや、無実の人間が虐殺されているのだ」

思想と宗教と利益と正義が馬鹿馬鹿しいような不幸なすれ違いの果てに、大戦争に発展してしまうお話は、今読む価値が充分にあると思う。とにかく私にとっては、一番復刊して欲しい小説(i人i)。お願いします、新潮社〜!!
各派、各個人、各思想が入り乱れて、登場人物もすさまじく多いのに、意外なほどわかりやすくて読みやすいのは、伝播される情報の配置の上手さにあると思ったのでした(読んだのはもう結構前なので、記憶がいいかげんかもしれないけど)。
まずは戦場から遠く離れたところで「戦果」について語られ、その後に「実際にそこで何が起こったか」が描かれるパターンが多かった気がする。読者は、電話も通信網も交通網もろくにない時代に、人の歩く速度で伝わった情報がいかに歪んで(あるときは「意図的に」歪められて)伝わるかを知ることにより、そこにいて、かかわった人々の思惑ごと、状況を知ることになるという構成。
リョサの小説は「マジックリアリズム」ではないけれど、この小説を読むと、ガルシア=マルケスとか、イサベル=アジェンデの、「いわゆるマジックリアリズム」的な書き方が、ファンタジーではなくてその場にいるそれぞれの人にとっての「事実」にすぎないのだなあと思えてくる。貧弱な避難民が正規軍を倒したり、死んだ人が生き返ったり、「歪んだ情報」と「目の前にある事実」は互いに矛盾することはよくある話なのだと。
リョサ原作で『ヤギの祝宴』という映画を見たことがある(id:shanimu:20100729)。この映画がリョサらしいなあと思ったのは、現代の視点から、過去を語ることによって、「おおよそどのようなことが起こるのか」をあらかじめ提示した上で、多数の(メインの物語とは直接は影響しあわない)登場人物を配しながら、サスペンスを高める手法だったから。原作は作品社からもうすぐ『チボの狂宴』として出版される。まあ、原作からは程遠いぐらい省略されている映画ではあるらしい(さもありなん(^^;)が、これも是非この機会にDVD化してほしい!!
ちなみに私は、世間的には評判のいい『フリアとシナリオライター』はあまり好きではないのでした。

フリアとシナリオライター (文学の冒険シリーズ)
マリオ バルガス=リョサ
国書刊行会
売り上げランキング: 1600
おすすめ度の平均: 4.0
1 物足りない
5 面白く読みやすいラテン文学
5 いつまでもページをめくっていたいと思わせる作品
4 抱腹絶倒
5 小説の醍醐味が味わえます。
でも、イザベル=アジェンデの『精霊たちの家』は好きなので、内容のシュミの問題かもしれない。
精霊たちの家 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-7)
イサベル・アジェンデ
河出書房新社
売り上げランキング: 248824
おすすめ度の平均: 5.0
5 最後数ページのために、他のページがあるといっても過言ではない
5 魂が揺さぶられる
5 ドラマチック・マジックリアリズム
5 豊穣かつ奔放な物語
5 読書の至福。