トム・ロブ・スミス『チャイルド44』
チャイルド44 上巻 (新潮文庫)
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トム・ロブ スミス
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チャイルド44 下巻 (新潮文庫)
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トム・ロブ スミス
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売り上げランキング: 4007
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おすすめ度の平均:
一気惰性息つく暇もないエンターテイメント巨編
動機は世界を矮小にしかねない。
意匠に纏まりを欠き、安手のハードボイルドのよう
閉塞した “理想主義国家”の闇と対決するレオ
ソビエト連邦は理想的な国家なので、人々はシアワセに暮らしているし、そこに犯罪は存在しない。殺人事件などもってのほか。起こった事件は全て、崇高な社会主義を信じない反逆者や、精神障害者、知的障害者によるものなのだ。さもなければ、ありもしない事件をでっちあげる西側諸国のプロパガンダによるものなのである。
という体制の下、ソビエトの各地で多発する「連続殺人事件」の存在に気がついてしまった一人の「国家の狗」がいた。同僚にはめられ、権力を奪われ、地方の民警に成り下がった彼が、「連続殺人事件」の犯人をつきとめるべく活動を開始する。ソビエトの密告社会の中では、情報収集もままならない。ばれれば、即死刑か、収容所送りか……。
現実に起こっている事件を「存在しない」ものとし、ありえない偽者の「理想」とすりかえる社会の中で、生き延び、且つ、殺人を止めるためにはどうすればいいのか。
というような話なのだが。
ソビエト密告社会にまみれながら、それと格闘する上巻は結構面白かった。嫁との関係とか。でもなあ、下巻がなあ……(´・ω・`)。そして、オチがなあ……。
ソビエトの不条理っぷりということなら、ノンフィクションのソルジェニーツィン『収容所群島』が本当に「事実は小説よりも奇なり」を地で行っていて、ソレに比べると、下巻の展開は非常にぬるい気がする。
収容所群島(1) 1918-1956 文学的考察
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そして、オチ。
えええええええ!? こういうのありなんかい……orz。超つまらんのですけど……。運命でも、偶然でも、必然でもなくて、ツクリゴトっぽくて、呆然。「伏線」にもなってないやろう?というぐらい弱いと思うのだが、ミステリー的にはこれはいいのか。正直無関係でも全然話としては成立しているやん。なぜ敢えてこんなしょうもないオチに???というぐらいがっくり。
動機としても、発想の異常さは買うけれども、兄貴がとりたてて必然性もなく(うーん、もっと最初に遭遇した被害者の辺りで何か強迫観念的なインパクトを受けていればともかく)収束してしまうのが、非常にしょうもない。これなら、ワシーリーさんの方がよっぽどステキなサイコさんであると思われるわ。
そうかあ、このオチが「いい」のか……と、ちょっとびっくりしたのでした。
私にはミステリーの評価軸がわかりません。